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2022/02/2622/02/12 固い信頼 師弟の絆②

 

 スポーツ、文化などで活動する師匠と弟子に出会いや信頼構築の秘けつなどを聞く特集『師弟の絆』を連載します。2回目は伊勢型紙の技法を活用した作品を制作する伊勢型紙彫型画会の代表大杉華桜さん(30)=鈴鹿市寺家出身=と門下生の小粥靖浩さん(59)=津市=に話を聞いてみました。
 ―彫型画の指導、受講を始めたきっかけは
 大杉(以降大) 江戸時代から伊勢型紙彫刻師として代々継承する大杉家に生まれ、型紙を始めたのは5歳でした。小さい頃は祖父の大杉華水と『遊ぶこと=伊勢型紙を彫ること』だったので、自然と彫り方などを覚えていったように思います。17歳の時に祖父が病に倒れたことから、大杉家の7代目を継承し、仕事として伊勢型紙と生活し、教室で指導をするようになりました。伊勢型紙を彫り始めて25年目になり、さらに飛躍した次のステップへ進もうと思っています。
 小粥(以降小) 初めて型紙に触れたのは子どもが中学生の時のPTA行事でした。その数年後、ある作家さんの個展で伊勢型紙の作品を見て感動し「こんなのが彫れたら」と思ったのがきっかけです。一番近かった教室が津中日文化センターで、2009年に華水先生から教わり始めました。
 ―彫型画の魅力は
 大 誰一人として、全く同じ作品を作ることができないという部分に魅力を感じています。祖父に自分が彫る動物をまねして彫るように言われたことがありました。全く同じ絵を彫り始めたのに、完成した祖父の作品には「荒々しさ」、私の作品には「柔らかさ」がありました。普段の教室でも「先生、ちょっとここを私なりに考えて彫ってみました!」と提案をいただくことがあります。自分なりの思いを彫り方で反映できる、それこそが彫型画が目指す『芸術を体現する伊勢型紙』の魅力であると思います。
 小 彫られた一つ一つの穴は、自分の命のかけらだと思っています。そういうものが形として残ることは幸せなことです。渋紙に向かい作品を彫っているときには無心になることができるんです。この時間は貴重です。
 ―互いから見てどんな師弟ですか
 大 小粥さんは寄り添う力が誰よりも強い方だと思います。教室の中で私が年下であっても、講師の立場として接するため、新人の方が質問の際、緊張されていることがあります。小粥さんはすぐに気付かれ、同じ生徒の立場から経験談を交えてそっと話し掛けられています。
 彫型画で「人」を彫ることは難しい題材ですが、小粥さんが彫る「人」からは、いとおしさや寂しさといった感情が自然と伝わる魅力があります。感情が伝わる作品を創作できるのも、寄り添う力があるからだと感じています。
 小 伝統を守りつつ、常に新たなことをやろうと試みている人、バイタリティーあふれる先生です。年齢は逆転していますが、やりづらさは全くありません。年齢差を感じさせない技術や才能を持ってみえますから。自分が学びたいと思っている技術を持っている人に教わるときは、年齢など関係なく「師匠」です。
 ―互いに注文を付けるとしたら
 大 どんなことも気にせずに、自分が良いと思う作品をどんどん創作してほしいです。私は制作時に、失敗しないようにしなければならないと不安になることがありますが、作品の良しあしは結局、制作者が良いと思った作品が素晴らしいものになります。小粥さんが良いと感じた作品に何度でも出合いたいと思っています。
 小 最近は彫型画に興味を持ってくださる若い方も増えてきたように思います。これからはさらに海外の人にも興味を持っていただけるような活動をしていっていただきたいですね。日本が世界に誇って良い文化、作品だと思います。日本という枠を飛び出していかれる先生の姿を見てみたいです。私も共に歩みます。
 ―今後の活動に期待していることは
 大 いつか講師になっていただき、一緒に彫型画の魅力を伝える存在になってもらいたいです。祖父と私を師と仰いでくれたからこそ、小粥さんにしかできない彫型画の伝え方があると思います。今後、未来の小粥さんのお弟子さんたちに出会うこと、彫型画の輪が広がっていくことを期待しております。
 小 これまでになかったような作品作りをしてみたいのでご指導をお願いしたいです。同時に作り上げる苦しみも楽しませていただきたいと思っています。

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