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2023/06/1023/06/10 新後継者紹介桑員レガシー②

仏教の心や情緒伝えたい
法盛寺の福井淳啓さん

 伝統を受け継ぎながら新たな発想を盛り込み、文化やビジネスなどの分野で尽力する人を紹介する特集『桑員レガシー』をお届けします。第2回は桑名市萱町の法盛寺副住職の福井淳啓さん(37)を紹介します。
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 後継のきっかけは―
 アパレル会社を経営する叔父の影響で、昔から服飾の世界に興味があり、大学在籍時には京都の古着屋でアルバイトをしていました。そのまま業界に就職しようとも思いましたが、卒業論文制作で、実家を調べることがあり、初めて真剣に自分のお寺と向き合いました。私が継ぐと25代目となり、歴史は750年を超えます。歴史をつむいできた先人の思いや苦労を想像すると、自然と継ごうと決意しました。
 やりがいや苦労している点は―
 やりがいは人の心や情緒に触れられることです。門信徒さまたちが、仏様や先人たちのご恩に思いを馳せ、手を合わせる姿は最も美しい姿の一つだと思います。しかし現代は合理さを追求する故に、敬う心や情緒をどこかに置き忘れてきたように思えます。伝統的な儀礼を大切にしつつ、その心や情緒、文化を伝えることの難しさを感じる時があります。
 工夫した点は―
 代々、法盛寺では儀礼に欠かせない伝統的な声明(お経)や雅楽を大切にしています。しかし、お寺を儀礼だけの場所にするのではなく、コンサートを開催するなど『集える場所』を目指しました。 ピアノを通して、仏様の心を感じていただければと、母が学生の頃、使用していたグランドピアノを本堂に設置し『寺ピアノ』と称して自由に弾けるようにしました。
 手水に花を浮かべ『花手水』にもしました。花は私たち人間と同じような姿を見せてくれます。さまざまな縁(えん)によって、一つとして同じではない花へと成長し、命終えていきます。その情緒を感じると、何も開花だけが美しいのではなく、どの姿も違った美しさがあることに気付かされます。
 アプローチは違いますが、仏教の心や情緒、文化に触れていただくことと共通しています。その目的は見失わないようにも考えています。
 今後の目標は―
 何をするにも大前提は仏様への感謝です。『伝統や新しさ』のどちらにもとらわれることなく、本質を見抜き、仏教の心や情緒、文化をさまざまな視点から伝えていきたいです。それらが世代や地域の隔てなく、人々をつなぐものになれば幸いです。

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