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2020/08/0820/08/08 デジタル時代の写真問う

いなべ在住 浦田さん
「地方でもできる」若手にメッセージも

 スマホやデジカメで誰でも簡単に撮影ができる時代。あえて写真館を開設し、プロならではのクオリティーと仕上がりを実感してもらおうと奮闘するフォトグラファーがいます。地方からの発信にこだわり「ネット環境の充実などで今は都市部じゃなくてもプロとしてやっていける。そんな現状も若手に伝えていきたい」と意気込みを話します。
 いなべ市大安町在の浦田貴秀さん(35)は昨年4月、同市北勢町阿下喜に写真館『鈴麓寫眞(すずろくしゃしん)』を開設しました。「デジタル化で映像がどんどん生産、消費されていく中、思い出を『形にして残す』ことの意味を感じられる場所にしたい」と思いを話します。
 2011年に愛知県弥富市からいなべ市に移住。もともと動画の撮影、編集を本業としていましたが、18年にカメラメーカーの主催するフォトコンテストで銀賞を受賞して以降、写真の仕事も平行して増えていきました。
 写真館の経営は、経費や効率の面から見るとメリットはほとんどないといいます。にもかかわらず写真館を開設したのは、強い信念からでした。1つは地方の可能性。「僕の写真は全て独学。学校で習ってない(セオリー通りではない)から他人と違うといえる。都市部で学ぶことは絶対的に必要なことではない。地方でも写真を仕事にすることだってできる。そんなメッセージを、特に若い人に伝えたかった」
 もう1つが地域との交流。「僕の仕事は地域外の現場が多く、地元の人に見えにくい。地域の一員として知ってもらえる場所が欲しかった」と話します。
 浦田さんは「昔の写真を見ると一枚一枚にすごく威厳がある。写真一枚の価値が違うと感じます。デジタル化が記録の大衆化に果たした役割は大きいと思うけど、そうした『記憶に残る一枚』をこの場所で追求していきたい」。

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